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睡眠時無呼吸症候群と当院での取り組み

睡眠時無呼吸症候群と当院での取り組み

長野病院 院長・循環器内科部長 山﨑正俊

 

息子1「親父の部屋から凄いいびきが聞こえてくる、うるさくて勉強できない!」

パパ「そんなはずない、うーん、そうかな、ちょっとは昼間眠くなる気もするけど」

娘1「ねえ、パパ、ポケモンスリープってアプリ知ってる?」

パパ「これすごいね、夜寝てるときのいびきが記録されたよ、長野病院に受診してみるよ」

こんな会話が家族の中で交わされることがあるでしょうか?

*ポケモンスリープ:2023年第3四半期のモバイルゲールのダウンロード第1位

(ある一定以上の音量のいびきを記録可能、ついでにかわいいポケモンにも出会えます。)

 

睡眠時無呼吸症候群はいびきで気づかれることが多いです、居眠り運転に起因する交通事故に関連し、メディアでもたびたび取り上げられており社会的な関心も高い疾患になります。さらに、循環器内科医である私がこの原稿を書いているところからご理解いただけるかもしれませんが、心臓・脳血管イベントの発症に強く関係し、重大なリスク因子の一つと考えられています。我が国における中等症以上の睡眠時無呼吸患者は940万人(14%)と推定されていますが、同疾患は高齢化にも強く影響を受けます。超高齢化が進む我が国において今後解決すべき喫緊の医療課題の一つであると考えられています。さあ、少し具体的に、睡眠時無呼吸症候群診断のための当院での検査・治療・さらなる取り組みについて説明していきます。

 

  • 簡易モニター検査:自宅での実施が可能ですが、確定診断がつかないことがあるため、さらなる精密検査が必要になることが多々あります。
  • 睡眠ポリグラフィー検査:一泊入院で確定診断が可能な精密検査です。脳波を測定しながら当院で寝てもらう検査になります。簡単なヘルメット様の測定機器を着用してもらいますが痛みを伴う検査ではありません。従来、大学病院等に紹介して実施してきた検査を令和5年1月から当院で受けていただくことが可能になりました(*当院では4名のCPAP療養士による指導の下安全に検査を受けていただくことが可能です)。

治療法:シーパップ(CPAP)療法

中等症以上の睡眠時無呼吸症候群の方は、夜寝るときにマスクを鼻に当てて寝てもらいます。マスクは空気を送り込むことが出来る機械に接続されており確実に気道閉鎖を防ぐことが可能になります。最も効率的に、負担も少なく有効な治療法であることが確認されており一晩で4時間以上の使用を目指します。また、軽症の方にも個別に治療に関するアドバイスをしています。

 

さらなる取り組み:当院では令和3年11月に190号線で発生した車両事故を契機に睡眠時無呼吸症候群の臨床研究を開始しています。狭心症や不整脈を診断する24時間ホルター心電図検査の実施で、偶然にも多くの睡眠時無呼吸患者が見つかることを新たに発見しました。この結果はThe 88th Annual Scientific Meeting of the Japanese Circulation Societyで発表を予定しています(Yamazaki M, Horio N, Tanaka A, Ibara E, Okazaki I, Fujioka A, Matsunaga M, Ishi H, Nakaso T, Nagano J. Effectiveness of Cyclic Variation of Heart Rate Index as a Screening Test for Obstructive Sleep Apnea Syndrome)。

 

文献:

  1. Benjafield AV et al. Estimation of the global prevalence and burden of obstructive sleep apnoes: a literature-based analysis Lancet Respir Med 2019;7:687-698